電子帳簿保存法の猶予期間とは?企業がとるべき対策を解説
2022年1月より施行された改正電子帳簿保存法によって、電子取引における電子データ保存が義務化されました。メールやEDI取引など電子的に授受した取引情報は、紙での保存が原則禁止され、電子データのまま保存する必要があります。ただし、この電子取引における電子データ保存については、2023年12月までの宥恕措置が設けられています。ここでは、電子取引における電子データ保存の義務化において企業がやるべきことに加えて、2022年12月16日公表の令和5年度税制改正大綱で設けられた新たな猶予措置についても解説します。

電子保存義務化の宥恕措置(猶予措置)とは?
電子保存義務化の宥恕措置とは、2022年1月以降において電子取引の保存要件をやむをえない理由で満たせない場合に、2023年12月31日までは従来通り書面での保存を認めるというものです。宥恕措置が設けられた理由や、具体的な内容を解説します。
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宥恕措置が設けられた大きな理由は、電子取引の電子データ保存に対する準備が間に合わない企業が多数いたためです。電子保存義務化は、事業規模や個人・法人を問わず、すべての事業者に適用されます。それまでデータでやりとりした領収書や請求書などを紙に出力して保存していた事業者は、書類管理体制の大幅な変更を迫られました。
また、電子取引を電子保存するにはさまざまな要件を満たす必要があります。そのため、大企業であっても、改正電子帳簿保存法の施行までに対応が終わらない事業者が少なくありませんでした。中小企業や個人事業主に至っては、制度の認知さえも十分に進んでいなかったのです。多くの事業者から「準備期間が足りない」という声が上がり、令和4年度税制改正大綱で2年間の宥恕措置が盛り込まれたという経緯があります。
さらに、2023年10月より導入されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)への整備を進めなければいけないことも、宥恕措置が設けられた理由のひとつです。インボイス制度が始まると、仕入れの際に課税事業者(適格請求書発行事業者)と免税事業者を分けて処理しなければならないなど、経理業務の負担が増大することが予想されます。そのような状況で、さらなる業務の煩雑化を避けるため、2年間の宥恕措置が設けられたとも考えられています。
電子保存が義務付けられるデータ
<電子保存義務化の対象となる電子取引のデータ例>
・電子メールの添付ファイルで受領した請求書や領収書
・クラウドサービスを利用してやりとりした請求書や領収書
・ECサイトなどでダウンロードした領収書
・EDIシステムを使ってやりとりした受発注データ
・DVDなどの記録媒体を介して授受した見積書
<電子保存義務化の対象となる書類>
・契約書
・見積書
・領収書
・発注書
・請求書
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電子保存義務化の宥恕措置の内容
電子保存義務化の宥恕措置は、改正電子帳簿保存法が施行された2022年1月1日から、2023年12月31日までの2年間適用されます。この期間においては、以下の2つの要件を満たす場合に限り、電子取引の電子保存義務が免除され、従来通り紙での保存が認められます。
<電子保存義務化の宥恕措置の要件>
1. 電子帳簿保存法の規定に従った電子帳簿保存ができないことにつき、やむをえない事情があると認められること
2. 税務職員の求めに応じて、電子取引に関するデータの出力書面を提示または提出できるようにしていること(整然とした形式および明瞭な状態で出力されたものに限る)
なお、やむをえない事情やデータの出力書面については、必要に応じて税務調査などで確認することになっており、税務署への事前申請は不要です。
令和5年度税制改正大綱で示された新たな猶予措置
2022年12月16日に公表された2023年度(令和5年度)の与党税制改正大綱において、2024年1月1日以降の新たな猶予措置が示されました。この新たな猶予措置によって、以下の条件をすべて満たす場合は、2024年1月1日以降も電子取引の電子保存義務が免除されます。
<猶予措置の適用条件>
1. 保存要件に従って保存することができない相当の理由がある場合
2. 1の相当の理由について、納税地等を所轄する税務署が認めた場合
3. 税務調査の際にデータを出力した書面(整然とした形式および明瞭な状態で出力されたものに限る)を提示・提出できるようにしている、かつ、データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合
なお、どのような理由が1、2の「相当な理由」にあたるのかについては、2022年2月時点では発表されていません。
今回の税制改正大綱によって、上記の条件を満たせば、2024年以降も電子取引のデータを紙に出力して保存することが認められるようになります。しかし、これは、決して「電子保存に対応しなくていい」ということではありません。新たな猶予措置の期限は設定されておらず、今後さらに改正が行われる可能性もあります。ペーパーレス化やDX推進のためにも、依然として電子保存への対応は必要といえるでしょう。
電子保存義務化において企業が取り組むべきこと
新たな猶予措置が示されたとはいえ、2023年10月から開始となるインボイス制度への対策や業務の効率化を図るためには、できるだけ早めの対策が必要です。まだ電子保存義務化の対応に着手できていない企業が取り組むべきことについて解説します。
どのような対策が必要か確認
まずは、自社の取引において発生する電子取引がどのような形態で、それに対してどのような対策が必要かを確認しましょう。
電子取引データには、電子メールにより受領した請求書などのPDFデータ、ウェブサイト上に表示された領収書のスクリーンショットなど、さまざまな形態があります。場合によっては、部署によって、ファイル名やデータの保存場所などのルールが違っているかもしれません。社内に存在するデータがどの形態に該当するかを把握した上で、保存要件や保存方法、保存場所を検討する必要があります。
電子取引制度の保存要件に沿った対策方法を決める
電子取引に関するデータ保存義務化に対応するには、「真実性」と「可視性」を確保するための要件を満たさなければなりません。自社での周知や仕組み作りによる対策も可能ですが、その場合、個々の対応ミスや今後の法改正のたびに修正や見直しが必要になります。社内の業務負担を軽減するには、要件を満たした保存・管理が可能な、電子取引制度に対応したサービスの導入がおすすめです。
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インボイス制度への対応を進める
2023年10月からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まります。インボイス制度導入後は、課税事業者(適格請求書発行事業者)から発行される適格請求書を保存しないと仕入税額控除が受けられません。なお、その際には課税事業者と免税事業者を分けて請求書を処理・管理する必要があります。
また、課税事業者から受け取る請求書が「適格請求書の条件を満たしているか」「軽減税率対象等の複数税率が正確に記載されているか」といった確認もしなければなりません。これらの作業を紙の請求書で行っていると、経理業務が非常に煩雑になってしまうため、電子帳簿保存法への対応と併せて請求書の電子化も進めていくべきでしょう。
電子帳簿保存法についてはこちらをご参照下さい。
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電子取引のデータ保存義務化への対応はシステムの活用を検討しよう
2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法によって、電子取引のデータ保存が義務化されました。メールやEDI取引など電子的に授受した取引情報は、原則として紙での保存が禁じられ、定められた要件に従って電子保存することが義務付けられます。一定の条件を満たす場合は電子保存義務が免除される猶予措置が設けられているものの、電子化への対応は企業にとって喫緊の課題であると考えられます。
特に、2023年10月から導入されるインボイス制度への対応を考えると、電子化の準備をいち早く進めたいところです。電子取引のデータ保存やインボイス制度への対応を進めるなら、それらに適応した請求書管理、経費精算システムの導入を行うことで、業務負荷の軽減が叶うでしょう。「電子帳簿保存法・インボイス制度への対応」や「経費・請求作業の効率化」は、SAP Concurのソリューションを活用するのがおすすめです。
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